クボタは、わが国のトラックスケールのトップメーカーとして、日々生産・出荷を
行っています。モノを計量するはかりでも、安全は最優先ですが、ドライバーさん
がトラックに乗車したまま乗り込むトラックスケールの場合、より一層安全性が
要求されることは言うまでもありません。
そこで、今月はトラックスケールの「強度計算」についての当社の取り組みを紹介
します。分かりやすいよう、当社の製品のなかでも小さいクラスである次の型式を
例にして説明します。
ひょう量=30t、載台寸法=幅2.7m×長6.5m、ピット式
当社のトラックスケールの強度計算は、社団法人 日本道路協会が発行する
「道路橋示方書(どうろきょうしほうしょ)」に準拠して行っています。
これは、日本における橋や高架道路等に関する技術基準を定めたものです。
トラックスケールは橋でも高架道路でもありませんが、それに類するもの
として、道路橋示方書の技術基準により計算を行います。具体的には、
トラックスケールの主要構造材である主桁およびデッキに加わる応力が
道路橋示方書が定める許容応力以下になるよう設計します。
許容応力 鋼種 適 用
① σ1≦1.4t/cm2 SS400 主荷重に対する許容応力です
② σ2≦1.7t/cm2 SS400 上記①に制動荷重の割増係数1.2を乗じた許容応力
③ σ3≦2.4t/cm2 SS400 上記②に偏芯による割増係数を乗じた最も不利な載荷
状態における許容応力
主桁1本当たりの応力について計算例を示します。トラックの後輪2軸の
片側が主桁上のロードセルピッチの中央に来たときに最大応力が発生する
ものとして計算します。
車軸にかかる荷重 P2=P3= 12 [t]
ロードセルピッチ L= 5.7 [m]
軸間距離 X= 1.25[m]
1m当たりの自重 W= 1 [t/m]
偏芯係数* C= 0.21
*偏芯係数Cの計算:C=(975+200)/975-1
主桁1本にかかる荷重に対する反力R1の計算(通常時)
R1=0.5・{P2・0.5L+P3・(0.5L+X)}/L [t]
主桁1本当たりのモーメントの計算
主荷重に対するモーメント
M1=0.5・R1・L-0.5・P3・X [t・m]
制動(ブレーキ)時の割増し分のモーメント
M2=0.2・M1 [t・m]
偏芯係数を考慮した割増し分のモーメント
M3=C・M1 [t・m]
スケール自重によるモーメント
M4=0.5・(W・L
2/8) [t・m]
応力の計算(上記数値を代入)
①σ1=(M1+M4)・100/Z= 1.3 ≦1.4 [t/cm2]
②σ2=(M1+M2+M4)・100/Z= 1.5 ≦1.7 [t/cm2]
③σ3=(M1+M2+M3+M4)・100/Z= 1.8 ≦2.4 [t/cm2]
*主桁H型鋼H400×200×8/13の断面係数Z= 1170[cm
3]
応力①,②,③、いずれも道路橋示方書基準の許容応力以下ですので充分な
強度を確保した設計であることが分かります。その他に主桁のたわみ量や
デッキの応力計算等も行いますが、ここでは割愛します。
以上強度計算例を示しましたとおり、弊社では厳しい条件で計算を行って
います。通常は計量するケースはない、ひょう量いっぱいのトラックが、
応力が最大になるポジションにある場合、さらには偏芯位置にある場合を
想定した強度計算を行っています。
しかし、衝撃荷重の場合には、静的荷重や緩やかな繰り返し荷重とは異なり、
瞬時に大きな力が作用します。以前トラックスケールの日常点検について
取り上げましたが、
http://kubota-hakari.net/p.php/5/5/20/計量時に急進入、急ブレーキ
など、また重量物をデッキ上に落下させるなど、はかりに衝撃荷重を与える
ことは避けていただきますようお願いします。はかりの精度確保のためにも
是非守っていただきたい項目です。