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クボタが取り組む7つの研究室 「クボデジ・オーソリティ」

トラックスケールの進化 ~ハイアック式からWindows機への移行~

今月号では、電子制御技術の進歩にともなうトラックスケール演算装置の
ダウンサイジングについてご紹介します。まずは、現行のスケールプリンタ
SP-200シリーズです。


<<SP-200の主仕様>>
OS:Windows CE
CPU:300MHz
メモリ:128Mbyte SDRAM
プログラミング言語:Visual C++
記憶装置:64Mbyte コンパクトフラッシュ
印字装置:インパクトドットプリンタ

SP-200シリーズは、このコンパクトなボディで、計量・登録・伝票発行・
集計・補正演算等をスピーディにこなします。

それでは今を去ること30年以上前の昭和50年当時は、どのような装置
で計量処理をしていたのか?ご紹介しましょう。

      <<HA型(ハイアック)計重機>>
        車両重量の計量を行う

      <<SC-300型メモペット>>
  |実車-空車|=正味重量の演算、空車重量の
  記憶、計量伝票の発行を行う

トラックスケールの主たる使用目的には「計量伝票を発行する」ということが
あります。(これは今も昔も同じです) 伝票を印字することは、ハイアック
計重機単体の機能に含まれていました。

      <<HA型計重機の印字機構>>

ここでは重量検出機構の原理は割愛しますが、はかりの目盛板の回転軸と
ギアで連結された「刻印車」と呼ばれる印字輪が指示重量に対応した
スタンプを押すという機械仕掛けの伝票印字でした。そして印字される
計量伝票はつぎのようなものでした。

       <<HA型計重機の計量伝票>>
ところが、この伝票には不便な点が2つありました。ひとつは、重量を
印字する際にあらかじめその重量が実車重量なのか、空車重量なのか
指定して印字しなければならない点です。計量伝票には実車重量欄と
空車重量欄が事前印刷されていますので、誤って印字欄を逆に指定して
しまうと、空車重量の方が実車重量よりも重い?というようなおかしな
伝票になっていました。
ふたつめは、実車重量から空車重量を差し引いて正味重量を求める
計算を人間の手で行う必要がありました。上記の伝票をご覧いただく
と、正味重量が手書きになっていることが分かると思います。多忙時
の事務負担増や計算間違いによるトラブルが問題点でした。

そこで、コンピュータのはしりともいえるSC-300型メモペットを開発
してトラブルの解決を図りました。メモペットでは、二度計量のうち
重い方を実車重量、軽い方を空車重量として自動減算し伝票印字する
ことができるようになりました。また、一日に複数回計量する車両は、
朝一度空車重量をはかり、それをメモペットに記憶させることにより、
以後は実車重量のみ計量すれば正味重量が算出できる一度計量の
機能も備えました。

では、マイコンやLSIが普及していなかった当時、メモペットでは
どのような機器構成で演算処理をしていたのか?を説明します。

<<メモペットの主仕様>>
OS:CPU:なし
メモリ:ROMを多数並べて構築
プログラミング言語:論理回路で構築
記憶装置:100万bit 磁気ドラム
印字装置:タイプライタ

メモペットではAND回路やOR回路の、いわゆる「0」と「1」の膨大な
演算処理を重ね正味重量の算出を行っていました。また、記憶装置は
磁気ドラムのため、それにアクセスし読み書きする機構や、ROMを
多数実装した複数のメモリ基板、大掛かりなタイプライタ等などを収納
するためにメモペットは写真のような大きな装置にならざるを得ません
でした。

現在では、CPU、メモリ、ロジックIC等の電子デバイスの進歩により、
さらに高速、大容量の演算処理がSP-200シリーズのようなコンパクト
な装置で可能になりました。

ちなみに記憶容量の比較ですが、1Byte=8bitですので、メモペット
とSP-200との差は512倍にもなります。今月はトラックスケールの
演算装置の機能アップとダウンサイジングについてご紹介しました。

なお、SC-300型メモペットは、昭和50年当時『コンピュータ』として
発売していました。歴史を感じさせる広告写真を最後にご覧いただきます。