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研究室

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クボタが取り組む7つの研究室 「クボデジ・オーソリティ」

ISOと計量法の関係について

今月は、ISO9000品質マネジメントシステムにおける要求事項と、
計量法による規制との関係について考えてみます。

いずれも計量器(計測器)の適正な維持管理を要求しているため、混同
しやすいところです。実際に、このメルマガ読者の方からも、「ISO9001
の品質マニュアルで社内基準として登録、管理する計測器は検定品じゃ
ないとダメなの?」とか、「ISO9001で要求されている校正記録と、検定
および定期検査等法定計量にかかる合格証明書はイコールだよね?」と
いうようなご質問が度々寄せられます。しかし、ISO品質マネジメント
システムと計量法とは、その根っこの部分が違います。



上述のように、ISO9001と計量法とは、その拠って立つ根幹が異なり
ますので、運用面で混同しないよう注意が必要です。もう少し詳しく検討
しましょう。ISO9001は顧客の立場に立脚し、製品やサービスの品質
保証に加えて、顧客満足の向上をも目指そうとするもので、そのための
仕事のやり方を定める仕組み(品質マネジメントシステム)です。

少し長いですが、ISO9001の規格要求事項から引用します。

7.6 監視機器及び測定機器の管理
定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために、組織は、
実施すべき監視及び測定を明確にすること。また、そのために必要な
監視機器及び測定機器を明確にすること(7.2.1参照)。

組織は、監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視
及び測定が実施できることを確実にするプロセスを確立すること。
測定値の正当性が保証されなければならない場合には、測定機器に
関し、次の事項を満たすこと。
a) 定められた間隔又は使用前に、国際又は国家計量標準にトレース
可能な計量標準に照らして校正又は検証する。
そのような標準が存在
しない場合には、校正又は検証に用いた基準を記録する。
b) 機器の調整をする、又は必要に応じて再調整する。
c) 校正の状態が明確にできる識別をする。
d) 測定した結果が無効になるような操作ができないようにする。
e) 取扱い、保守、保管において、損傷及び劣化しないように保護する。
さらに、測定機器が要求事項に適合していないことが判明した場合
には、組織は、その測定機器でそれまでに測定した結果の妥当性を
評価し、記録すること。組織は、その機器及び影響を受けた製品に
対して、適切な処置をとること。校正及び検証の結果の記録を維持
すること(4.2.4参照)
。 ・・・以下略


7.6の下線部に適合するために、社内基準として使用する計測器にも、
計量法上の検定や定期検査に合格した特定計量器を使用しなければ
ならないと誤解される向きもあります。

しかし、先にご説明したとおり公的な取引安全を確保するために規制を
かける計量法はその目的を異にしますので、社内の検査、測定に使用
する計測器のすべてに、計量法上の法定検査に合格した特定計量器を
導入する必要はありません。最低限、出荷工程等において取引・証明に
使用する計量器だけ、計量法対応しておけば充分です。

また、7.6 a)で要求されている「定められた間隔」で校正するという点
についても、計量法および施行令が定める定期検査の周期(非自動
はかりは2年に1回)に一致させる必要はなく、要求される品質、精度を
確保するのに必要な限度で、費用対効果を勘案してその間隔を定めれ
ばよいと考えます。

最後に、7.6 a)で要求されている「国際又は国家計量標準にトレース
可能な計量標準に照らして」校正又は検証するという規格については、
最近大きな動きがありますので、簡単に補足します。従来は検定および
定期検査等の法定検査における合格証明書、トレーサビリティ体系図
(標準供給体系図を含む)等をもってISOの要求事項に適合する
トレーサビリティの証明としてきた認証取得組織が多かったと思います。

しかしながら、今後いっそう厳密な計量トレーサビリティが求められる
見込みです。

すなわち、ISO9001の7.6 a)で要求されている「計量のトレーサビリティ」
とは、ただ単純に国際又は国家標準と比較し、つながっていることではなく、
特定された(ISO/IEC17025で承認された)手法によって実現された、
不確かさがすべて表記された切れ目のない連鎖であるという理解が定着
してきました。7.6 a)の要求事項は、試験所及び校正期間の能力に関する
一般要求事項であるISO/IEC17025を基準とする認定制度によって
認定された校正機関によって実現可能とされています。
(国内では、JCSS、ASNITEの認定校正機関)

今後は計量法の法定検査に合格したことの証明書は、その特定計量器が
法定計量の特定業務(取引・証明等)に用いる要件を満たすことを証明
するものではあるが、ISO9001の要求事項である計量のトレーサビリティ
の根拠を与えるものではありません。ますますISO品質マネジメントシステム
と計量法の異同について意識する必要がありますね。

今回は少しややこしい内容になりました。「不確かさ」や「JCSS」に
ついては、後日詳しく取り上げたいと思います。